【報ステ解説】利上げ政策に影響は?米・2銀行が破綻…波紋広がる 日経平均3日続落(2023年3月14日)

【報ステ解説】利上げ政策に影響は?米・2銀行が破綻…波紋広がる 日経平均3日続落(2023年3月14日)

14日、日経平均株価が一時700円以上、下落しました。3日続けての下落です。きっかけは、金利が上昇するアメリカで、中堅の銀行が相次いで破綻したことです。経済への影響はどこまで広がるのでしょうか。

破綻したのは、総資産約2000億ドル、日本円にして28兆円と、全米16位のシリコンバレー銀行。金利の上昇で、投資していた国債などの価格が下がり、さらに、主な顧客がIT系などのベンチャー企業で、テクノロジー産業の不振から、預金を引き出す動きが加速。そのため、信用不安が広がり、取り付け騒ぎとなっていました。

ベンチャー企業経営幹部:「神経がすり減りました。メインバンクでもあったので。シリコンバレーの大手銀行でしたし、こんな事態、誰も思わなかったはず」

スタートアップ企業CEO:「取引先に支払いができません。何万もの企業が、銀行に現金がなくて。私の会社の“破綻”だけでなく、経済にも深刻な問題です」

加えて、ニューヨークを拠点とする、シグネチャー銀行も破綻。暗号資産の関連企業が、主な顧客でした。

アメリカ市民:「次に破綻する銀行はどこか。みんな不安です。みんな2008年を覚えているのです」

銀行の相次ぐ破綻に脳裏をよぎるのは、2008年に起きた、いわゆる「リーマンショック」。その影響で、世界的な株価下落が起き、金融危機に陥りました。

今回、アメリカ政府はすばやく動きました。まず、預金の全額保護を発表。そして…。

バイデン大統領:「きょう、政権が迅速な対応を取ったことで、市民は安心できます。銀行システムは安全です。預金はいつでも引き出せます。当該銀行に口座がある中小企業も、安心して給与と経費を払ってください」

市場が開く直前に演説を行い、国民や企業に平静を呼び掛けました。しかし、その余波は、日本経済にも及び、株価は続落しました。

個人投資家:「(Q.リーマンショックを思い返したりしますか?)感じますよね。ただ、対応がアメリカの場合、今回、丁寧に対応している気がするが、かえって、どれだけ大きいことなのかと心配になる」

【相次ぐ銀行破綻の背景は】

今回の破綻は“銀行”と“顧客”の状況に特徴があります。

シリコンバレー銀行は、総資産が約28兆円の中規模銀行で、主な顧客は個人ではなく、企業が中心です。その顧客の大半はIT系のベンチャー企業だということです。銀行は顧客から預かった預金の多くを、アメリカ国債などで運用していました。

一方の顧客側は、コロナによりオンライン化が進んだことで、顧客の大半を占めるIT企業の業績が上がり、多くの人を雇っていましたが“コロナ特需”が終わり、抱え過ぎた人員の解雇に伴う費用や、業績悪化による赤字などで多額の現金が必要となりました。

そこで、シリコンバレー銀行は、保有する国債を売り、現金を作る動きに出ていたということです。

◆報道ステーションの経済担当・松本寛史デスク

(Q.銀行が国債を売って現金化する動きが破綻につながったのでしょうか?)

松本デスク:「そこに一番大きな影響を与えているのが、アメリカで行われている急速な“利上げ”です。例えば、アメリカで一番メジャーな10年国債を見てみます。これまで銀行が保有していた国債が2年前に買った場合、利率が1%でした。ただ、急速な利上げで、現在市場には利率が4%の国際が出回っています。現金化するため、今持っている国際を売ろうと思っても、利率1%の国債は売れません。そのため、例えば1億円のものを9000万円などに下げて、損を出してでも売るしかない状況になりました」

松本デスク:「さらに、シリコンバレー銀行が国債取引で損を出しているという情報が伝わったことで、顧客から「早く預金を出した方がいい」という動きが出ました。破綻した前日には引き出しの要請が約5.6兆円あり、行き詰って破綻に至りました」

(Q.“安全な資産”とも言われる国債が銀行破綻を促すというのに驚きました)

松本デスク:「国債は、満期まで保有していれば、買った時の値段で返ってきます。ただ、今回それを途中で売ろうとしてしまいました。しかも、安くしなければ売れなかったことが問題です。その背景にあるのは、急に預金を引き出される事態への想定が甘かった気がします。金融当局は、投資先が国債だから、ある意味“安全なものだよね”というところだけではなく、銀行が置かれている状況なども把握して監督する義務があったと思います。逆に言うと、どうしても利上げをやらなければいけなかったので、利上げばかりに思いがいっていた気もします」

(Q.今回の一件で、アメリカの利上げ政策に影響は出てきますか?)

松本デスク:「これまでアメリカは、インフレ抑制のために利上げを続けてきました。ただ、今回の件で“銀行の破綻を抑える”ことにも目を向けなければいけません。インフレと銀行の安定化という2正面対応を迫られています。アメリカの最新の消費者物価指数は、前年同月比6.0%でした。9%を超えていた去年6月ごろよりは落ち着いてきていますが、目標の2%まではほど遠い状況です。利上げをまだやめるわけにはいかないなかで、どう対応するのか。ジレンマな状況だと思います」

(Q.2正面作戦はなかなか難しいですね)

松本デスク:「FRB(米連邦準備制度理事会)は来週、利上げをどうするか決める会議を控えています。今回、当局の対応が早かったと感じますが、まだ利上げを続けなければいけないので、早く今回の危機を収束させて、利上げをやるという意思を感じた部分もありました。一方で、今回の件を受けて、中小から大手の銀行に預金を移す人が増えているという話もあるので、まだ危機の火種があります。証券会社などでは『利上げを一度停止して様子をみるのではないか』という予想も出ています。ただ、様子をみればインフレが再燃して、経済に悪影響を与える可能性もあります。一番避けなければいけないのは、2頭を追って1頭も得られない。インフレも止まらないし、銀行の危機も救えない事態は避けなければいけません。舵取りが極めて重要になってきます」 (C) CABLE NEWS NETWORK 2023
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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