岩手県陸前高田市で津波で家族全員を失った男性がいます。その後、新たな家庭を築き、生まれた息子はまもなく亡くなった娘と同じ小学校に入学します。失った命と新たな家族、紡いだ12年を追いました。
■津波で妻娘ら家族全員を失う それでも前へ…12年間の軌跡
家族4人の13回忌を迎えた小島幸久さん(51)。東日本大震災の津波で両親と妻、一人娘を亡くしました。
駆け寄ってきた男の子。震災後に生まれた新たな家族です。長男の空大くん(6)。小島さんは「かけがえのない家族」を失った故郷で、「新しい家族」とともに歩んでいく道を選びました。
小島幸久さん:「13回忌になったので、これからも見守っていて下さいと。節目と言えば節目。だからといって何も変わらない、まだ。震災というのは鮮明にきのうのことのように思い出す」
■12年前…岩手県陸前高田市
父・捷二さん、母・キミさん。妻・紀子さん、そして、最愛の一人娘・千空ちゃん。津波は一緒に暮らしていた家族を一瞬で奪い去りました。
当時、小学1年だった千空ちゃん。負けず嫌いで、ダンスがとても上手でした。
小島さん家族は地域に愛される電器店を営んでいました。たった1人、取り残された幸久さん。電器店の仕事を再開し、仮設住宅で人々の生活を支えます。ところが、抱えきれない孤独感に襲われます。
小島幸久さん(当時40):「仕事の忙しさは元に戻ったかもしれないけど。むなしさ。誰のために稼いでいるんだ…。1人はダメだね。ダメだ、つらい。慣れてきたけど、やっぱり家族があったほうがいいな」
“家族”の大切さを改めて痛感します。
■息子に亡き娘から1文字を 津波で家族失い…12年間の軌跡
幸久さんを救ったのは新しい家族でした。亡くなった母親の親友の紹介で、さちこさんと結婚。長男・空大くんが生まれました。
娘の「千空」から1文字もらい、「空大」と名付けました。そこには特別な思いが。
小島幸久さん:「震災で紀子と千空が死んでしまったから、空大が生まれたわけだから、今を生きるというのはそういうこと。たらればは人生にない」
2歳になった空大くんは家業の電器店を手伝うようになっていました。
■成長した息子 春から小学生に 亡き姉に思いはせ…入学を報告
そして、あの日から月日は流れ、震災から12年の今年。6歳に成長した空大くんです。
亡くなった姉・千空ちゃんが当時、通っていた小学校に空大くんはこの春から入ります。
弟の幸太さんは、幸久さんの笑顔が増えたと感じています。
弟・小島幸太さん(45):「笑顔とか、自然になったというか増えたというか。楽しい雰囲気ですね」
弟・小島幸太さん:「空大くん、入学おめでとう」
空大くん:「ありがとう。自由帳」
小島幸久さん:「カンカンしろよ。『もらったよ』って」
天国にいる家族に報告します。
空大くん:「(Q.誰に言ったの?)ちいちゃんたち。カンカンした」
小島幸久さん:「宝物ですね。成長が目に見えて分かるので可能性しかない」
■家族失った場所で生き続ける 紡いだ12年「ここにいたい」
震災で失った家族と新たに築いた家族。父・幸久さんにとってはどちらもかけがえのない家族です。
小島幸久さん:「『ちいちゃんはお姉ちゃんなんだよ』と。一回、『いつになったら(千空に)会えるんだ』と聞かれたことがあって、『いや会えないよ、お空にいる』と。最近は『会いたい』『いつ来る』とは言わない」
これからも家族とともに…。
小島幸久さん:「皆ここで亡くなったのだから、その場所にいたい。ある種の使命感が働いていたのかもしれない」
故郷・陸前高田で亡くなった家族の思いも一緒に紡いでいきます。
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