岸田総理は、衆議院の予算委員会で、同性婚の導入をめぐり「社会が変わってしまう課題」と答弁したことについて、改めて弁明しました。
岸田総理:「社会に関わる問題だから議論が大事だと。社会が変わってしまうから議論は大事だとを申し上げた。議論を否定する意図は全くない。変わるから議論をしましょうという趣旨」
岸田政権が掲げる“多様性を尊重する社会”という目標。
立憲民主党・西村智奈美代表代行:「『検討』『慎重に検討』『極めて慎重に検討』『幅広く意見を聞いて検討』
検討という言葉のバリエーションがたくさんあるんですけれども、『結論が出ました』と聞いたことがない。いつまでにこの件、結論を出してくれますか」
岸田総理:「選択的夫婦別姓制度の問題、LGBT理解増進法、同性婚、国民の議論の深まり具合はさまざま。その状況に合わせて『検討』という言葉も使い分けてきた。国民の理解の深まり具合を見ながら、政治としてしっかり判断していく。いつまでに結論を出せ、そういう課題ではない」
超党派の議員連盟は15日、性的マイノリティーの支援団体などからヒアリングを行いました。『LGBT理解増進法案』について、5月のG7サミット前に成立を目指す方針を確認しました。
“LGBT議連”自民党・岩屋毅会長:「理解増進法すらできず、前に進めていくことはできない」
この法案は、2021年、「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されないとの認識のもと」という文言について、自民党内での反対論が根強く、提出を見送られた経緯があります。ただ、この法案ですら、今、起きている差別の解消にはつながらないと、当事者は訴え続けています。
ヒアリングに参加した松岡宗嗣さん。当事者として、法整備を求めるオンライン署名活動などを行っています。
一般社団法人『フェア』松岡宗嗣代表理事:「“差別はだめ”という基本的なルールを示したうえで、それでも起きてしまうので、理解を広げていくステップが基本。“理解を増進する”だけだと、具体的な差別の被害を受けたときに、“相手の理解がなかったですね、残念でした”になってしまう」
性的マイノリティーの当事者は、日本の人口の10人に1人ともいわれています。国会内で14日、当事者が訴えました。
「トランスジェンダーの当事者です。履歴書の性別欄で迷ったり、面接を受けても落とされたり」
「10年間一緒にいたパートナーをがんで亡くしました。最後に連絡が来ないかもしれない。会うことが叶わないかもしれないと」
当事者。支える人、そうでない人、思いは、さまざまです。ただ、自民党内では“差別”という言葉をどうするのか、議論も始まっていません。超党派の議連で会長を務める岩屋氏は、こう述べました。
“LGBT議連”自民党・岩屋毅会長:「(Q.自民党内で『差別は許されない』の文言を消去すべきという意見がある)これからの議論。そこでしっかり議論するのが大事。あらかじめ対立点をあぶり出すような発言は控えるべき」
1週間前、“党内の心配払拭に尽力する”としていた稲田氏は、こう話します。
“LGBT議連”自民党・稲田朋美衆院議員:「(Q.1週間で議論は進んだか)自民党の中で議論が進んだかでいわれれば、それは感じられない」
実際に党内から聞こえる声です。
自民閣僚経験者:「“差別”には触れない自民党の元々の案で、党内をまとめる。それで進めないと、今の国会で成立なんてできない』
自民党幹部:「“差別”となると、色んな意見がある。党内で議論して、ワーワーやっても、自民党にはメリットがない」
国連の人権理事会から性的マイノリティーへの差別解消について、度々、勧告を受けている、これが日本の現状です。
一般社団法人『フェア』松岡宗嗣代表理事:「(Q.社会は変わってしまうと思うか)もうすでに社会は変わっている。政治に求められる役割は、より良い社会に変えることだと思う。それを怠っていることを自覚してほしい」
◆政治部・与党担当の平元真太郎記者に聞きます。
(Q.『LGBT理解増進法案』は、なかなか前に進みませんが、何がボトルネックになっているのでしょうか)
1つは、2021年、自民党内で法案が棚上げとなった経緯にヒントがありそうです。あるベテラン議員は「議論の最終段階で、安倍元総理がストップをかけた」と明かします。党内には、今も安倍元総理の考えに共鳴する議員が多くいます。
もう1つは選挙です。2年前にLGBT法案に賛同した複数の自民党議員は「その後の自らの選挙で妨害を受けた」と話していて、一部にはトラウマがあります。また、何があっても自民党支持のいわゆる“岩盤支持層”とLGBT法案に反対する層は、ある程度重なっているのではないかという見方が自民党内にはあります。自民党のある幹部は「4月の統一地方選挙までに党内議論が混乱するのはプラスがない」と語っています。
(Q.社会が多様性を大事にするなかで、逆に法案を進めないのは、リスクになるのではないでしょうか)
性的少数者をめぐって、荒井前総理秘書官が「隣に住んでいたら嫌だ」などと発言しましたが、岸田政権は、多様性を社会で認めていくことを示すためにも、この法案でアピールしたい考えです。しかし、あまり前のめりに進めていくと、党内の分断や支持者の離反などリスクが想定され、どのように党内の議論を進めていくのか慎重に検討しています。
(Q.これから自民党は、どのような方向に進むのでしょうか)
自民党には、5月のG7広島サミットまでには、何とかしないといけないという思いはあります。G7各国の中で、LGBTの権利を守る法整備がなされていないのは日本だけで、議長国として、岸田総理に恥をかかせるわけにはいかないというわけです。ただ、少なくとも3月下旬ごろまでは予算審議があり、本格的な議論は春以降となる見通しです。
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