元徴用工問題を巡る日韓交渉は最終段階に入った。韓国メディアは2日、東京ドームで3月10日に開催される「ワールド・ベースボール・クラシック」、WBC日韓戦を、岸田総理と韓国のユン・ソンニョル大統領が一緒に観戦する案が浮上、また、韓国政府が元徴用工訴訟問題の解決策を2月中に正式に公表すると伝えた。松野官房長官は3日、岸田総理と試合を観戦する計画があると韓国メディアが報じた事実を否定した。日韓両政府は1月30日に外務省局長協議を開き、元徴用工訴訟問題の解決に向けた話し合いを行っていた。2月中には外相会談を開催する方向で調整が進む。
元徴用工問題は、2018年に日本の最高裁にあたる韓国大法院が日本企業に対して賠償を命じる判決を下したことに端を発した。日本企業側は1965年の日韓請求権・経済協力協定を根拠に、「完全かつ最終的」解決が確認されているとする日本の見解と相反するとして、賠償を拒否した。原告側は韓国国内にある日本企業の資産を競売にかける「現金化」の手続きを進めている。元徴用工問題を巡っては、ムン政権は「司法の判断を尊重する」として、日本との協議は消極的だったが、昨年、政権交代したユン政権は、前のめりの姿勢で事態収拾に向けて動き出した。
先月12日に韓国政府は、「韓国の財団が日本企業の賠償金を肩代わりする」という内容の解決策の有力案を公表した。韓国企業からの寄付金拠出を受けて、韓国政府傘下の財団が賠償金に相当する金額を原告に支払うという構図となる。被告とされる日本企業の資金拠出を求めていないことも盛り込まれた。請求権を巡る問題は、1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決とした」として、日本政府は解決済みとの立場を堅持している。植民地支配と侵略に対する「痛切な反省や心からのおわび」については、1995年村山総理の戦後50年談話、2005年小泉総理の戦後60年談話、また、2015年、安倍総理の戦後70年談話で表明してきた。韓国政府は先月12日、元徴用工訴訟問題を巡り、日本側に「誠意ある呼応」を求めていく方針を示した。
元徴用工問題を巡り韓国国内では、最大野党が同訴訟の原告を巻き込み、ユン政権と対立姿勢をあらわにする。韓国政府が解決策の案を公表した先月12日、原告側は野党議員らと会見し、「被害者無視の屈辱的な解決策は即刻撤回すべきだ」と主張した。最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表は先月行われた討論会で、「韓国財団が日本企業の賠償金を肩代わりする」という韓国政府の解決策案について、「国民の常識とかけ離れた反民族的で反歴史的な態度だ」と述べた。韓国・与野党対立の背景に、イ・ジェミョン代表がソンナム市長在職時の都市開発に絡む不正疑惑について、検察が捜査に着手したことが指摘される。野党は「政敵排除のための不当捜査だ」と反発して、政府・与党との対立が先鋭化している。経済・安全保障にも暗い影を落とし、戦後最悪と評されるまでに悪化した日韓関係。元徴用工問題を巡る日韓の同意は実現するのか。
★ゲスト:牧野愛博(朝日新聞元ソウル支局長)
★アンカー:橋本大二郎
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