逼迫(ひっぱく)する家計に不安を抱える年金生活の80代夫婦を取材。エアコンなし、スマホもなし…キムチを食べ、“暖”を取るなど、涙ぐましい節約術が…。
先行きが見えない物価上昇が続くなか、話題を呼んだ「老後2000万円問題」。改めて専門家が再試算すると、“2800万円”必要という結果に…。見直すべき節約ポイントについても、専門家が解説します。
年金生活者も、現役世代も必見です。
■エアコンレス生活…年金生活者“節約のリアル”
都内に雪が舞った23日、取材班が向かったのは、82歳の夫婦のお宅です。
去年の夏、値上げが相次ぐなか、涙ぐましいまでの節電に取り組んでいた様子を取材しました。
厳しい猛暑日が続くなかでも、“エアコンレス生活”を送っていました。
濡らしたシャツを着ることで、光熱費を抑えていると話していた主人。前回の取材後も、光熱費は高騰。1カ月19万円の年金収入に対し、家賃は4万円。さらなる節約に取り組んでいました。
妻(82):「食費としては(去年より)大きくバンと増えたことは無いけど。(通帳)見ると、これも値上がりしたなとか」
夫(82):「電気、ガス代のほうが心配でね」
一体、どんな節約をしているのでしょうか。
夫:「鍋、大きい火に変えなきゃ」「(Q.電子レンジとか、ないんですね?)ないです。やっぱり電気代高い、あれは」
妻:「これ(ガス)だけですね」
電子レンジや電気ポットは置かず、部屋の照明もすべて、電気代が安いLEDに交換しました。
夫:「エアコンは、うちは…全然買わないですね」
さらに、この冬から始めたのが…。
妻:「コタツっていうか、コタツもどき。コタツのようなものだけど、コタツじゃないの」
理由を確かめようと、コタツの中を確認してみますが、中に器具が付いていないです。
妻:「暖かいのはこれ。ホットカーペットが暖かいだけ」
コタツ代わりに使っていたのは、唯一の暖房器具でもある、ホットカーペットです。
この時の部屋の温度は16℃でしたが、寒さが厳しい時には、ベストの上から、はんてんを重ね着するなどして対処しているといいます。
さらに…。
夫:「これをね、ババっと」
妻:「ちょっと、入れすぎないで」
夫:「これぐらい入れなきゃ、おいしくない」
そばに大量のキムチをトッピング。体の中からも温めようと、辛味を効かせたメニューにアレンジしています。
しかし、出来得る限りの節電を続けても、先月の光熱費は2万円を越えてしまいました。
夫:「(Q.スマホとかは使わない?)携帯は使っていません」
通話料がかかる携帯電話を使わず、パソコンのメールを使うことで、通信費を節約しているのだといいます。
食費も、特売の日に必要な物だけを買うようにして節約していますが、これまでを上回る5万円に…。支出の総額は18万4500円。全く余裕がない状況です。
妻:「医療費というのは、死ぬまで少なくなるというのはないですから」
夫:「増えるばっかりだな」
■2000万円では足りない? 専門家「2800万円必要」
これから先の生活に不安を抱えているという年金受給者の声は、街でも聞かれました。
年金受給者(78)月約16万円:「ぐんぐん年金(受給額)が下がっている。何でこんなにかけてきたのを引くんだよ~という感じ」
年金受給者(73)月約10万円:「医療費も生活費に含めるから、10万円以上いっちゃう、切り詰めても。家賃だけでも年金を上回っている」「(Q.貯金を取り崩しながら生活?)そうそう。縮めてもらいたい寿命を」
これから年金をもらう世代からも、将来への不安の声が聞かれました。
3人家族 会社員(46):「この先どうなるか分からないので、なるべく貯蓄は増やしていきたい」
2019年に金融庁の審議会が発表した「老後2000万円問題」。夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦が年金のみで生活する場合、毎月の赤字額が5万円ほどとなり、30年間では、およそ2000万円の赤字になるという試算が物議を醸しました。
この時と同じ年金収入が続くと仮定し、現在の物価高をあてはめたらどうなるのか?改めて専門家に試算してもらうと、驚きの金額が出ました。
経済評論家・加谷珪一氏:「100歳まで生きると仮定して、(35年間で年金とは別に)2800万円のお金が必要になる。そのぐらいの資金を持って、老後に臨まないと厳しい」
新たな試算では、物価上昇などによって支出が30%増加し、月におよそ6万6000円の赤字に…。前回の試算に比べ1万6000円ほど増えています。
結果、およそ2800万円の資金が必要に。前回と同じ期間、95歳までの30年間でも2500万円必要という結果になりました。
この試算結果に、街の人からは、次のような声が聞かれました。
年金受給者(78) 月約16万円:「2000万円の時代は聞いていたけど、ここまで…こわい」
4人家族 会社員(40):「子どもがいるので、なかなか(節約)できていない。頑張って働きたいと思います」
厚生労働省は、6月以降に支給される年金について、2%程度の引き上げを発表。しかし、専門家によると、家計の支出に大きく影響する「物価の高騰」が、今後も数年間にわたって、続く可能性があるといいます。
加谷氏:「中国を始め、東南アジア、アフリカ諸国も次々に経済的に豊かになって消費が拡大する。エネルギーとか食料の奪い合いになる可能性は高くて。今後も長期にわたって、じわじわと物価は上がると思ったほうが良い」
■FPがアドバイス「家計簿はまずやって頂きたい」
節約生活を続けながらも、圧迫する家計に不安を抱える82歳の夫婦。他に見直すべき節約ポイントはないのか?専門家に見てもらいました。
まず指摘したのは、あらゆるものが値上げになって以降、増えてしまったという、月5万円の食費です。
ファイナンシャルプランナー・飯村久美さん:「食費とお小遣いに関しては、予算を決めて。食費専用の財布を作って頂いて、1週間の頭に8000円を入れていく。8000円しか使えませんから、予算が守りやすくなる」
専門家がアドバイスしたのは、週に一度、決まった額だけを専用の財布に入れ、その金額の範囲で買い物をやりくりすることで、予算を超えることなく、出費が抑えられるといいます。
光熱費も安くできる可能性があるといいます。
飯村さん:「(電気の)基本料金の部分を下げるという方法もあります」
契約している電気のアンペア数を減らして、電気代を抑える方法も。
年金受給者にとっても、これから年金を受給する世代にとっても、将来を不安にさせる、あらゆるものの物価高。それに対抗するには、今すぐ細かな家計の管理を始めるべきと、専門家はいいます。
飯村さん:「とにかく何にいくら使っているかというのを把握することが大事。家計簿をつけるのは、まずやって頂きたい」
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