【独自】矯正したはずが“出っ歯”に…歯科矯正トラブル 被害総額2億円 被害者153人(2023年1月26日)

【独自】矯正したはずが“出っ歯”に…歯科矯正トラブル 被害総額2億円 被害者153人(2023年1月26日)

 歯科矯正のサービスを巡って、東京・銀座の歯科クリニックが患者と金銭トラブルに発展していることが明らかになりました。被害者は全国で150人以上。被害総額は、2億円に及ぶとみられています。

■トラブルも…130万円返らず「絶対に許せない」

 被害額約130万円 女性(30):「治療もしていないのに、お金だけ支払っている状況なので。本当に早く何とかしたいという思いでいっぱいですね。実際に育休中ということもあって、全然、私も働いていないのもあって。経済的にかなり厳しいですし、貯金を切り崩している状況なので」

 こう被害を訴えるのは、都内に住む30歳の会社員の女性。歯科クリニックとトラブルになるきっかけが「歯の矯正」です。

 女性:「コロナ禍でマスクがあるから、矯正がちょうど良い時期でもありまして。私もやりたいなと思って始めた」

 おととし7月、歯並びに悩みを抱えていた女性が申し込んだのは、銀座の歯科クリニックが“最初の月だけ無料”と勧誘していた「マウスピース矯正モニター」です。

 ところが、その後、クリニックから、翌月以降も、モニターとして活動を続けることで、毎月、報酬が支払われ、187万円かかる矯正費用が実質無料になると説明を受け、契約を続けたといいます。

 しかし、契約から8カ月後、突然、クリニック側から次のような連絡があったといいます。

 クリニックの関連会社:「現状、資金移動が間に合っておらず、お支払日の延長をお願いさせて頂きたいと思っております。ウクライナ・ロシア問題などの海外情勢の影響で、海外口座からの送金取引が停止しているということが主な要因です」

 女性:「(Q.ロシアとウクライナはクリニックと関係ある?)ちょっと意味が分からないなという感じでした。そもそも、何で海外からの送金の話が出てくるのかも、さっぱり分からなかった」

 その後、クリニック側の予約も取れなくなったため、女性は治療をストップ。130万円の借金だけが残りました。

 女性:「治療もできないままで、お金だけ払い続けるっていうのは、絶対に許せなかったので。自分で動くしかないなって。クリニックにも行きましたし、モニター報酬払っていた会社に直談判に行った」

■運営会社に“直談判”も…終始“あいまい対応”

 去年8月、インターネット上で知り合った同様の被害を訴える女性らと、銀座にあるクリニックの運営会社を訪ねた女性。その時の音声です。

 女性:「今、分かる情報だけでも、お話し頂いてもよろしいですか?」

 社員:「担当者が、また別の者になるんですけど。今の担当者が、コロナ(感染)で。きのうの段階で、すべて弁護士対応になってくるということなので。払えるか払えないかという話も、すべて弁護士対応になっている状況」

 直談判しているにもかかわらず、あいまいな対応に終始したという運営会社側。その後、問い合わせには返答がないままだといいます。

 女性:「これはもう、払われないんだろうな。このまま逃げるつもりなんだろうなというのは、対応の感じで分かりました」

■通っていたクリニックで着々と進む“解体作業”

 女性が通っていたクリニックを直撃取材。すると、驚きの光景を目撃しました。

 女性が通っていたというクリニックは、銀座駅から数分の場所にあります。ただ、ゴミ袋などが見え、中では解体作業が進められています。資材が外に運ばれていて、着々と解体作業が進められています。

 電気設備やドアなども取り外され、歯科クリニックがあったことが分からないほど、解体が進められていました。

 解体作業員の男性:「(Q.解体はいつからですか?)きょうからです」「(Q.歯医者の物はありますか?)ないです。電気だけです」「(Q.受付とかは?)ないですね」「(Q.歯医者はどこに行った?)分からないですね」

■矯正のはずが“出っ歯”に…前歯も「かみ合わず」

 金銭トラブルで精神的に不安な日々を送っている女性。それに加えて、歯にも違和感が…。

 女性:「右の歯の隙間見えます?セカンドオピニオンの先生に、『出っ歯も治っていないですね』と言われた。元々、出っ歯じゃなかったんですよ。『出っ歯なんですか、私?』って、その時にびっくりして、悲しくなりました」

 そこで、女性が、マウスピース矯正を取り扱う、都内の別の歯科クリニックを訪ねると、口の中を見た歯科医は、すぐに異変に気付きました。

 雪下歯科医院・雪下明人院長(53):「前歯がかみ合ってない状態。前からこうですか?」

 女性:「いえ」

 雪下院長:「治療し始めて、こうなった?」

 女性:「はい。(以前は)前歯はちゃんとなっていたと思います」

 雪下院長:「治療経過に関しては、はっきり言って、かなり良くない。治療がうまく進んでいない状態だと思います」

 さらに医師は、女性の前歯には埋まった歯があり、マウスピースでは、歯並びは治らないと指摘します。

 雪下院長:「こういう歯の間のスペースが狭い人は、(両側の歯が)引っ掛かって出てこない」「(Q.マウスピース矯正は向かない?)最初に、これ(埋まっている歯)を抜いてしまうか、一番良い方法は、針金のワイヤー矯正を最初にしていく。最初の段階で、マウスピース矯正はありえないです。おそらく、経験値が少ない先生がやられたんだと思いますね」

■他にも…“放置”の女性「歯がない状態8カ月」

 さらに取材を進めると、治療が受けられず、突然、歯が抜けたという人や歯を4本抜かれ、そのまま放置されてしまったという女性もいました。

 被害額約60万円 女性(39):「(Q.下の歯も抜いている?)そうですね。上下4本です。もう、この歯がない状態で、8カ月くらいは、ずっといる状態なので。何のために、こんな苦しい思いをして、歯もなくなって。何を頑張っているんだろう」

■運営会社の元従業員「ただの自転車操業に」

 患者との金銭トラブルばかりか、健康被害まで指摘されているにもかかわらず、突如、閉院した歯科クリニック。理由は何だったのでしょうか?

 クリニックを運営する会社の元従業員が、取材に応じました。

 運営会社の元従業員:「銀座院の経営は赤字で、家賃も高くコストがかかるため、今月、閉院したと聞いている。歯科クリニックの運営会社の本業は金融。客の矯正費用を運用して、キャッシュバックするというビジネスモデルだったが、どうやら運用が全くされていなかったようで、ただの自転車操業になっていた」

■弁護士「詐欺的なモニター商法だったのでは…」

 25日、都内の弁護士事務所には、歯科クリニックへの被害を訴える女性らが、相談に訪れていました。

 弁護士:「歯医者がお金取って逃げちゃった?」

 女性:「そのまま逃げられちゃった」

 弁護士:「まだ、お金だけならいいけど、中途半端に引っ掛かり付けたり、すきっ歯にしたりして」

 被害額約150万円 女性(35):「そのすきっ歯も、そのままだったりして。今、マウスピース着けてはいるんですけど、前歯のすぐ横が、すきっ歯のままなので、ちょっと黒ずんでいるように見られたりする」

 被害額約130万円 女性(30):「自分の日常生活を取り戻したいですし、新しい家族を迎え入れたところなので、穏やかに一刻も早く過ごしたいというのが今の思いです」

 被害額約100万円 女性(34):「本当にあの…ちゃんとクリニックと運営会社が、責任取ってもらえるように、お願いしたいです」

 被害女性たちから話を聞いた弁護士。歯科クリニックの目的は金銭で、治療する気などは最初からなかったのではないかと指摘します。

 被害者弁護団 加藤博太郎弁護士:「被害に遭った方の多くが若年者。そして、女性であったりします。『歯並びを直したい』『矯正していきたい』という若い女性の美的な意識に付け込んだ、悪質なビジネスモデルだったんじゃないかなと思います。実際には1000人以上もの方々に、実質無料モニターだという形で勧誘していた。1000人もの人に実質無料というのは考えられない。ビジネスモデルが成り立たないんですね。詐欺的なモニター商法だったんじゃないかなというふうに思っています」

■運営会社は「慎重に検討して対応したい」

 現在、分かっているだけで、被害者は全国に153人。被害者らは26日、クリニックの運営会社などを相手取り、総額およそ2億円の損害賠償を求める訴訟を起こすことを決めました。

 この事態に、歯科クリニックの運営会社は…。

 運営会社の代理人弁護士:「当社として、責任のある契約については、支払う方向で、今後も対応していきたいと思っております。疑義がある契約などについては、慎重に検討して、対応したいと思います」

(「グッド!モーニング」2023年1月26日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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