23日から始まった国会。岸田総理が施政方針演説を行いました。
岸田総理:「『検討』も『決断』も『議論』も、すべて重要であり必要。それらに等しく全力で取り組むことで、信頼と共感の政治を本年も進める」
岸田総理がまず打ち出したのは、防衛政策の転換でした。
岸田総理:「外交には、裏付けとなる防衛力が必要。いざという時に、国民の命を守り抜けるのか。極めて現実的なシミュレーションを行ったうえで、十分な守りを再構築していくための防衛力の抜本的強化を具体化した」
敵のミサイル発射基地などを攻撃する“反撃能力”の保有を柱に、5年間で43兆円の予算を確保すると強調。その“財源”をめぐり、政府は、すでに“増税”を決めていますが、演説で触れられることはありませんでした。
報道ステーションが、21日、22日に行った世論調査。岸田内閣の支持率は、先月から3ポイント減の28.1%となり、政権発足以来、最低となっています。また、防衛政策の見直しについては、岸田総理の国民への説明が『不十分』との声が8割以上に及んでいます。
岸田総理が“最重要”と位置付けた少子化対策。児童手当の拡充などが取り沙汰されますが、こちらも財源の問題は切り離せません。
岸田総理:「内容に応じて、各種社会保険との関係、国と地方の役割、高等教育の支援の在り方。さまざまな工夫をしながら、社会全体でどのように安定的に支えていくかを考えてまいります」
演説を受け、与野党からは、このような声が上がっています。
自民党・茂木幹事長:「気迫にあふれる演説で、まさに歴史の分岐点に立つ我が国が進むべき方向性を示し、新たな時代を作り上げていく強い総理の決意が感じられました」
立憲民主党・泉代表:「 『増税隠し演説』でしたね。増税という言葉を使わずに演説をした。見事な言葉遊びだなと思いました」
立憲民主党の野田佳彦元総理。民主党政権だった2012年、施政方針演説で「社会保障と税の一体改革」の必要性を訴え、消費増税への道筋をつけたものの、退陣に追い込まれました。今回の“防衛増税”について、こう述べました。
立憲・野田佳彦元総理:「安全保障戦略が固まる前に、GDP2%という数字ありきで進み、そして、5年間で43兆円という嵩(かさ)が決まり、財源が大変そうだと増税の話が出てきたり、丁寧な議論に欠けている。財源については今回はよく触れないで、もわっとした表現なんで、これで国民に理解しろというのは、とても難しいのではないか。(Q.総理経験者からして、岸田総理の演説はどう評価する)本当に心から国民に訴えて理解してほしいというストーリーが見えなかった。『明治以来の大きな転換期だ』と時代認識を言いながら、それに沿った説明責任を果たそうという感じは残念ながらなかった」
◆岸田総理の施政方針演説を本会議場で聞いていた政治部・千々岩森生官邸キャップに聞きます。
(Q.施政方針演説をどう見ましたか)
国会って、こんな静かだったかなという印象で、議場全体から熱を感じませんでした。岸田総理が壇上にあがって、マスクを外した瞬間、ワッと湧きました。新しいフェーズが始まるぞという感じでしたが、始まってみると、私の感想は『奇妙な静寂』でした。特に、与党から「絶対、岸田政権を支える」という熱が感じられませんでした。演説、文章が終わるごとに、「よし」「いいぞ」とか拍手があって、総理もボルテージが上がっていきますが、これがない。野党席から総理ではなく、与党席に向かって「おーい、仕方なく拍手してるんじゃないか」と皮肉なヤジが上がっていました。また、野党も野党で「絶対に岸田政権を倒す」という雰囲気も微塵に感じられない。おざなりでヤジを飛ばしている感じでした。
(Q.内閣支持率が低いからですかね)
内閣支持率が低いのに、与党の中で、岸田降ろしが起きるわけではなく、野党も「岸田政権を倒す」という感じでもなく、奇妙な低空飛行のバランスが国会の中にも表れている感じでした。
(Q.演説の中身はどう見ましたか)
最近、取材して感じるのが、岸田総理の高揚感です。岸田総理は「検討ばかり」「決断できない」とよく言われますが、全然、そんなことはなく、ここ数カ月、どんどん政策を進めています。この奇妙なスピード感、国民のなかで受け止め切れないところもあると思います。岸田総理は、周辺が違和感を感じるくらい、すごく強い危機感を持っています。ウクライナや中国の動きがあるそんな時代のなかで、自分はそこの大きな転換点、そして、一国のリーダーである危機感と裏返しの高揚感みたいなのが強いと思います。
(Q.高揚感がある割には、国会が冷めているのは、どうしたらいいのでしょうか)
例えば、岸田総理がやろうとしていることの一つでも、安倍元総理が進めようとしたら、いいかどうかは別ですが、国会にデモ隊が押し寄せる。これが、岸田総理がやると進んでいく。
(Q.説明が足りないのでは)
説明が足りないのか、キャラクターなのか。もっと言うと、安倍元総理のような保守の人が、保守の政策を進めるのと、岸田総理のようなリベラルな人が保守の政策を進めるという違いがあると思います。保守の人が保守の政策を進めると、リベラルの人たちは猛反対します。しかし、リベラルの岸田総理が保守の政策を進めると保守は納得する。妙な静けさは、そういう政治論があるのではないかと私は分析しています。でも、静かな国会は見たくないですね。
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