【報ステ解説】「経済を犠牲にしてでも強気姿勢を」日韓“狙いうち”中国ビザ発給停止(2023年1月11日)

【報ステ解説】「経済を犠牲にしてでも強気姿勢を」日韓“狙いうち”中国ビザ発給停止(2023年1月11日)

中国政府は10日、日本でのビザの発給を停止すると発表しました。外交・人道目的以外のすべてのビザが対象です。

水際対策を強化した日本への対抗措置とみられていますが、日中で経済活動を再開しようとする動きが高まるなか、早速「待った」が掛かっています。

感染が爆発的に広がる中国について、日本政府は、陰性証明など水際対策を強化したものの、ビジネスや留学なら入国可能です。

東京都内のビザ申請センター。申請に来ても、ただ帰るしかありません。

貿易関係の会社に勤務:「前に何人か並んでいたけど、その人たちも帰っていたので、無理だろうなとダメもとで一応聞いてみたんですけど、人道上の理由以外は受け付けませんよと」

去年、夫が上海に赴任した田中さん。今月下旬から現地で家族一緒に暮らすことを楽しみにしていました。

上海に渡航予定の田中さん:「やっと行かれるかなっていう時に。この子が小さいので、忘れちゃうかと思って、夫のことも。ちょっと寂しいというか、どれくらい待ったらいいかという先行きも、見通しが立たないので、それが困っています」

出発は目前。日本を離れるとなれば、色々準備が必要です。

上海に渡航予定の田中さん:「車をまず売ることになってしまって、売却が決まってしまったので。今まであったのがなくなってしまうと、とても不便ですね。まだまだ一人では歩けないですし」

7歳の娘は、友達がすでにお別れ会をしてくれたといいます。

娘(7):「(Q.中国に行けなくなった話は聞いた?)聞いた。(Q.どう思った?)友達ともっと遊べるって。(Q.お父さんは?)お父さんも会いたいけど、どっちか分かんないんだけど、やっぱりお父さんに会いたい気持ちのほうが強いかなって。テレビ電話でいつも会ってるけど、ほんとに会ったほうがいいからさ」

上海だけで1万以上あると言われる日系企業。この3年間、中国当局の対応に翻弄され続けています。

日系メーカーに勤務:「(他の企業は)4月で人事異動があると思うので。ちょうど今ぐらいに内示を出して、“さぁビザの準備を”という時期。どうしようもないので、対応していくしかない」

中国での爆発的な感染拡大を受け、欧米も日本と同様に陰性証明など水際対策を再び強化しました。

しかし、ビザ停止という対抗措置は、日本と韓国に対してのみ。まさに狙い撃ちです。

松野官房長官:「中国が、新型コロナ対策とは別の理由で、査証発給の制限を一方的に行ったことは極めて遺憾であり、中国側に対して外交ルートで抗議するとともに、係る措置の撤廃を求めたところであります」

外務省幹部A:「不愉快ですよね。まったく整合性のある措置じゃない」

外務省幹部B:「中国で(1日に)死者2名とか、そんな透明性のない情報開示をしているわけだから、日本などが行っている水際措置は当然でしょう」

中国政府の反応はというと…。

中国外務省・汪文斌副報道局長:「我々が取った措置は、完全に正当で合理的である。科学に基づく防疫措置を作るよう、関係国に改めて呼び掛ける。(Q.アメリカやヨーロッパも同様の入国制限措置。なぜ中国は“同等の措置”を取らない?)中国は、関係国の“差別的措置”をみて、対等の措置をしたまでである」

【日本に厳しい対応…中国の本気度は】

◆中国総局・冨坂範明総局長

(Q.中国政府の思惑はどこにありますか?)

中国政府も本音では、人の交流を増やして「早く経済を良くしたかった」と思います。

しかし、日本が中国のゼロコロナ政策の撤回を否定するような、到着時の検査に踏み切ったために、日本に甘いところを見せたくないという国民感情に配慮し、厳しい措置を取らざるを得なかった側面があるかもしれません。

多少、経済を犠牲にしてでも、強気の姿勢に出たのには、そういった背景があると思います。

(Q.中国政府の本気度はどの程度だと思いますか?)

11日も、日本人と韓国人に対して、中国での乗り継ぎのビザ免除を一時停止するなど、本気度はかなり高いと思います。

ただ、韓国に対しては、韓国がすでに止めている短期ビザのみの停止です。

一方、日本に対しては、外交・人道的なビザを除く、ほぼすべてのビザと厳しい対応です。

こういったことから、日本への対抗策の方が本気度が高い気がします。

(Q.ビザの発給停止はいつまで続くと考えられますか?)

韓国にある中国大使館は、ビザ再開の条件として、差別的な入国条件を取り消せば、再び修正するとしています。

韓国は、短期ビザの停止期限を1月31日までとしているので、そこが一つのめどになると思います。

一方、日本の中国大使館は、再開の時期について「通知を待て」としか言っていません。

また、日本側も、水際対策について期限を区切っていません。

中国が不満に思っている「到着時のPCR検査」や「隔離処置」をやめない限り、ビザ停止が長期的に続く懸念があります。

ただ、ある党関係者は「PCR検査を簡易的な抗原検査に戻すだけでも違う」と話していて、中国の感染状況が落ち着いてきて、PCR検査を簡易的な抗原検査に戻せるようになった時が、一つのビザ発給再開のタイミングかもしれません。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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