日銀は、20日まで開いた金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策の一部を見直すことを決めました。
これまで日銀は、「長期金利をゼロ%程度に抑える」としたうえで、長期金利は“±0.25%程度”の変動幅で、推移するよう調節するとしてきましたが、この変動幅を『±0.5%程度』に変更すると発表しました。日銀の黒田総裁は「利上げではない」としていますが、市場では「事実上の利上げ」との受け止めが広がり、円相場は、1ドル=131円台まで円高が進みました。
◆経済部・日銀担当の進藤潤耶記者に聞きます。
(Q.黒田総裁の主張と、市場の受け止めの矛盾をどう理解したらいいのでしょうか)
市場関係者のほとんどにとって、今回はサプライズでした。一言でいえば、そのような感想です。黒田総裁は「利上げではない」と言っていますが、市場の受け止めとしては「事実上の利上げ」とみています。日銀幹部も、これまで何度か「変動幅を引き上げることは、事実上、利上げになる」と発言しています。だから、市場も「ようやくアメリカとヨーロッパとの金利差が縮小した」と反応したことで、一気に円高が進んだということです。
(Q.一方で、東京株式市場では、景気減速の懸念で売り注文が広がり、日経平均株価は、一時、800円以上、値下がりしました。具体的に何を懸念して下がったのでしょうか)
懸念は、企業収益の悪化です。理由としては2つあります。ます、好調だった輸出企業(製造業など)は恩恵が減ってしまうという懸念。もう一つは、金利が上がると、企業の資金調達コストの上昇にもつながる。そうなると、投資も減って、企業収益も減るのではないかという懸念から、全体の株価が下がりました。
(Q.円安が拍車をかけ、物価が高騰していますが、今回の発表で、物価は落ち着くと期待していいのでしょうか)
関係者に話を聞きますと、原材料や食料などについて、輸入価格が円高で抑えられるが、高止まりはするだろうという見立てです。気になる電気代、ガス代などは劇的に下がるものではなく、3カ月後くらいに、多少、下がる可能性はあるという表現をしていました。
(Q.金利と聞くと、浮かべるのが住宅や車のローンですが、どんな影響がありますか)
住宅ローン会社の担当者に聞くと、固定ローンは、10年国債近辺の利回りを指標とするようで、早ければ、来月から0.1%ぐらい、わずかだけれども影響は出てくるかもしれないと話しています。変動ローンは、短期金利に連動しているので、今回の政策変更の影響はないということでした。
(Q.賃金が上がらないなかで、物価が上昇するといういまの“悪い流れ”を解消する一歩になるのでしょうか)
黒田総裁は会見で「賃上げをより行いやすくなっていくと期待できる」と話してました。ただ、政策決定会合に携わる日銀の元審議委員に聞くと「来年は、今年の物価上昇分を遅れて転嫁するので、上がるかもしれない。ただ、それも少しにとどまるのではないか。逆に来年は物価上昇が落ち着くことで、賃金も上がらない1年になってしまうかもしれない。この政策で、一歩進むかと聞かれると、進んでいると答えている人はいないのではないかな」と話していました。
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