プーチン大統領は15日、経済に関するテレビ演説の中で、今年のロシアの経済成長について、2.5%縮小する見通しを明らかにした。西側の動きを阻止するために、「アジアやアフリカ、中南米のパートナーとの経済関係を発展させることにより、物流や金融の制限を撤廃する」と発言し、「孤立の道を歩むことはない」と外交関係の維持に自信を伺わせた。これを裏付けるように、ロシア産原油の輸入を巡っては、今年2月から11月までの間に中国は約1.6倍、一方、インドは3月から11月までの間に約14倍と増加している。西側諸国の禁輸による制裁下にあっても、中印のロシア産原油の輸入により、ロシアは戦費を賄っていた可能性は高い。
ロシアの主要な収入源である原油輸出に打撃を与え、原油価格の安定維持は可能なのか。5日、G7・主要7カ国などは、EU域内における海路を通じたロシア産原油の取引価格の上限を、1バレル=60ドルとする措置を講じた。戦争継続を支える財源確保を封じ込める狙いだ。つまり、上限価格を超えたロシア産原油の輸入を禁じ、海上輸送に関連する保険などのサービス提供をできなくしたのだ。ロシア産原油の大半はタンカーで輸送されており、輸入業者は欧州の保険会社に対し、取引価格が上限価格を上回らないことを示す必要がある。今回の措置によって、上限価格以下の取引を強いることが可能となる。上限価格措置の発動により、中印についても、原油の海上輸送の保険枠組みに巻き込むことで、ロシア産原油の輸入を減少・抑制させる思惑がG7にあると見られる。
黒海から地中海につながるトルコのボスポラス海峡周辺で、石油タンカー多数が滞留した。トルコは、今月初めから船舶に対し保険証書の提示を義務付けていることが、滞留する原因と見られている。トルコは、適切な保険証書を保持する石油タンカーだけに領海の通過を認めており、検査に時間を要すると説明している。原油輸送をタンカーに依存せざるを得ない事情から、ロシア側は100隻以上の中古タンカーの調達に動いたとされている。国籍不明のタンカー船団、「影の船団」を駆使することで、主要な原油の輸出先となったインド、中国などに供給することを目論み、制裁措置を打開する狙いと見られている。
制裁で設定されたロシア産原油1バレル=60ドルに含まれた意図と狙いは。ロシアの原油生産コストは、1バレル当たり30~40ドル程度。上限価格を低く設定すれば、ロシアにとって採算割れが生じて不利になる。このシナリオについて、「ロシアが報復措置として、原油生産を止める事態となれば、原油の国際価格の上昇を招く」と指摘し、また、「1バレル=60ドルの設定は、原油価格の高騰阻止を目指す妥協点である」と、番組アンカーを務める野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は解説する。G7などによる制裁発動により、欧米が仕掛ける新たな経済戦争の姿とは、また、ロシアの戦費調達に打撃を与えることは可能なのか。木内氏は、来年の原油市場の動向に注目する。
★アンカー…木内登英(野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト)
★ゲスト:渡部悦和(元陸上自衛隊東部方面総監)、駒木明義(朝日新聞論説委員)
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