ロシアのショイグ国防相は、ヘルソン州を流れる「ドニプロ川」の西岸地域からの「撤退」を命じました。ウクライナ軍の攻撃により補給がうまくできなくなったためとみられています。しかし、専門家の中には、「敵に背中を向ける一番危険な行為をわざわざ宣言するだろうか」と懐疑的な見方もあります。
■ロシア国防相“占領した唯一の州都”から「撤退」命令 その意図は…
有働由美子キャスター
「ロシアが一方的に併合を宣言した、ウクライナの4州(ドネツク州・ルハンシク州・ザポリージャ州・ヘルソン州)。そして、その最も西側のヘルソン州について、ロシアのショイグ国防相が、『ドニプロ川の西岸地域からの撤退』を命じました。小栗さん、相当、ロシアにとっては大きなダメージになるんじゃないでしょうか?」
小栗泉・日本テレビ解説委員
「そうなんですよね。このヘルソン市というのは、ロシア軍が占領した唯一の州都ですし、それだけに精鋭部隊を配置していましたから、ここから撤退するというのは、大きな波紋を呼んでいます」
「では、なんでそう宣言をしたのか、軍事に詳しい、防衛研究所の高橋杉雄室長は、『市街地の近くにある、ドニプロ川にかかる橋を、ウクライナ軍が『ハイマース』という射程の長いロケット砲システムで攻撃したことで、このヘルソン市など、ドニプロ川西岸へのロシア軍の補給がうまくいかなくなった。貴重な精鋭部隊を全滅させるくらいなら、一度撤退して部隊を逃がしたいという風に、軍事的なメリットをとったのだろう』と分析しています」
有働キャスター
「となると、すぐ撤退するということですか?」
小栗委員
「それがですね、この宣言には懐疑的な見方もあります。ロシアに詳しい廣瀬陽子教授は、『撤退は、軍事的には正しい戦術だ』としつつも、『敵に背中を向ける一番危険な行為をわざわざ宣言するだろうか。こっそりといなくなるのが王道だ』ということです。さらにウクライナ側からは、『地元のウクライナ人を強制移住させて、空いた家屋にロシア兵が一般人のふりをして住み着いている』という情報もあり、『油断させて市街戦を仕掛けようとしている可能性もある。宣言には半信半疑だ』と話しています」
有働キャスター
「まさにこれが“情報戦”かもしれないと」
小栗委員
「そういうことなんですよね。廣瀬教授は、『いずれにせよ、ロシアがギリギリの戦いを強いられていることは間違いない』としています」
■ロシア軍は今後どう動く? 注視すべきは「橋」の扱い
有働キャスター
「そうすると、この先のポイントというのはどこになるんでしょうか?」
小栗委員
「注目は、ロシア軍が撤退する時に、ドニプロ川にかかる壊れかかった橋、これをどうするか、その扱いだというんです」
有働キャスター
「橋の扱い…」
小栗委員
「防衛研究所の高橋杉雄室長は、『ロシア軍が、ウクライナの反撃をとにかく食い止めたい、それほど弱っているということであれば、この橋を全て破壊するだろうし、もしも、もう一度、戦力を整えてヘルソン奪回をする意図があれば、橋を残すだろう』という風に見ています」
有働キャスター
「廣瀨さん、いかがですか」
廣瀬俊朗・元ラグビー日本代表キャプテン(「news zero」パートナー)
「ロシア軍がどんどん追い込まれる状況になってきていると思います。このままさらに追い込まれると、冷静な判断ができずに、なりふりかまわず反撃に出てくるかもしれないので不気味ですね」
有働キャスター
「しばらく、ロシアが本当にヘルソンから撤退するのか、しないのか、注意深く見ていく必要がありそうです」
(2022年11月10日放送「news zero」より)
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