ロシア軍は、ウクライナ南部・ヘルソンから撤退することを決めました。
ロシア軍のスロビキン総司令官が、ヘルソン州を流れるドニプロ川の東側まで部隊を退避させることを提案しました。
ロシア軍・スロビキン総司令官:「現状を評価した結果、ドニプロ川東岸に防衛態勢を敷くことを提案します。我々の部隊を西岸に配置しても意味はありません。東岸への移動で自由になる部隊をほかの戦地に回すことも可能です」
ロシア・ショイグ国防相「その判断と提案に賛成だ。撤退を開始し、川の対岸への人員・武器などの安全な移送を確保するように」
これは、ロシアにとって苦渋の決断です。
2月24日、ロシア軍は北から一気にキーウ陥落を狙いつつ、北東部、東部、さらに南部からも一斉に侵攻。ウクライナ側が首都防衛に全力を注いでいる隙に、クリミアから投入した圧倒的物量でヘルソンを制圧しました。
そして5週間前、ヘルソン州を一方的に併合。今回の侵攻で唯一占領できた州都であるヘルソンからの撤退は、ロシア軍が収めた“最大の戦果”を手放すことを意味します。
撤退が正式に決まった9日、ヘルソンでは“きな臭いこと”も起きていました。ヘルソンの親ロシア派ナンバー2であるキリル・ストレモウソフ氏が交通事故により亡くなったことがわかりました。事故の詳細はわかっていませんが、ストレモウソフ氏は、ヘルソンの前線からロシア軍が後退した際、軍を厳しく批判していた人です。事故当日の朝、本人はこんな動画を投稿していました。
ストレモウソフ氏:「ナチスどもはヘルソン州の防衛線突破に失敗した。状況はロシア軍の完全なコントロール下にある」
今回の撤退について、防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんは、「撤退せざるを得ないということは、ロシア軍が“追い込まれている”ともいえる。ドニプロ川の西側で孤立する精鋭部隊を東側に一度撤退させることで、戦力を温存し、立て直しを図る狙いがある」と分析しています。
兵頭さんが注目しているのは、ショイグ国防相とスロビキン総司令官の撤退をめぐる一連のやり取りの映像が公開されたことです。兵頭さんは「政治的なダメージをコントロールする狙いがある」といいます。「国内向けに“戦略的な撤退”と見せ、戦況悪化で高まった動揺や反発を抑える。撤退し不利になったとしても、提案したスロビキン総司令官に責任をかぶせ、プーチン大統領への批判をかわすことができる」と分析しています。
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