急激な円安で、海外の生産拠点を日本に移す国内回帰の動きが加速しそうです。中国産を国内産に替えて、コストを2割削減するというメーカーを取材しました。
■国内回帰「中国より2割安く作れる」
22日、埼玉県のとある工場へ向かいました。“企業秘密”だらけの工場で、案内されたのは…。
アイリスオーヤマ 埼玉工場 荒木一春さん:「こちらが、金型メンテ場です」
大手生活用品メーカー「アイリスオーヤマ」の工場。そこにあったのは、4つ並んだ巨大な金属の箱です。
荒木さん:「これが今月の9日に、中国から入ってきた金型です」
金型とは、商品を製造する際に必要な“型”のこと。この中に、プラスチックなど原材料を入れて固めることで、商品を大量に製造できます。
金型は、今月上旬に中国の工場から日本に輸送してきたばかり。現在は、その金型のメンテナンス中で、来月中旬から収納グッズなど、およそ50品目を国内で生産します。
これまでは、コストを安くするため中国の工場で生産していましたが、金型を日本へ戻した理由、それは…。
アイリスオーヤマ SCM課 小松健一郎マネージャー:「現時点での中国から当社が受け取る価格と、日本国内で生産する価格を比較すると2割ほど、一部の製品においては、日本で生産したほうが価格的に安く作れる」
中国のロックダウンや原油高。マイナス要因が次々と浮上するなか、アイリスオーヤマは今年6月ごろから生産拠点を日本に戻す検討を始めていました。
そこに重なったのが、今回の円安です。
小松マネージャー:「この変化に対して、どれだけ早く対応できるか。それが競争力につながると思います。全力で早く実現できるように、進めていきたいと考えております」
■カーナビも“国内”に…30万台以上を生産予定
こうした企業による国内への回帰の動きは、他にも見られます。
音響機器メーカー「JVCケンウッド」は、インドネシアなどで行っていた国内向けのカーナビの生産を長野にあるロボットを使った自動化生産の工場に全面移管を開始。
今年度は年間30万台以上の生産を予定し、来年度以降はおよそ50万台の生産規模を目指すとしています。
こうした企業の国内回帰で、地方にある変化が生まれ始めています。
■アパレル大手も国内に…地域経済“活性化”にも一役
岡山にあるアパレルブランド「ワールド」の工場。
ワールド国内製造部 田代裕二部長:「ここからが縫製ライン」
中国やベトナムのロックダウンをきっかけに、生産の拠点を国内に戻しています。
田代部長:「2、3年前は、100名を切った時代もあるが、国内回帰を受けまして、人員的な増強を会社としてあげていて。現在は127名という規模で、20%強の増強をしている」
この工場では、採用人数を増加。通常6人ほどで行っていたライン作業を今は倍の12人にまで増やすなど、地域経済の活性化にも一役買っているといいます。
ワールドグループ 大峯伊索常務:「去年でいうと40%くらいの国内生産比率になっている。それを早期に50%に引き上げて、数年後には大半を国内にしていこうということで。思い切ったことを打ち出して、そういう準備を進めている」
これまでは海外で作ったほうが安上りでしたが、今や円安に原油高と、日本国内で生産したほうが安く済むといいます。
第一生命経済研究所 永濱利廣氏:「すでに、国内回帰を始めてる企業は相当前に、国内回帰を決断してるわけで。今の円安が急速に進んだのは、今年の3月以降ですから。むしろ今後は、円安という後押しも加わって、さらに国内回帰の動きが加速するんじゃないかと思う」
(「グッド!モーニング」2022年9月26日放送分より)
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