【独自】「モノなしマルチ商法」命を絶った22歳女性…150万円の返金交渉“録音音声”【羽鳥慎一 モーニングショー】(2022年9月13日)

【独自】「モノなしマルチ商法」命を絶った22歳女性…150万円の返金交渉“録音音声”【羽鳥慎一 モーニングショー】(2022年9月13日)

 22歳の女性が実体のない投資話などでお金を集める「モノなしマルチ商法」の被害に遭い、150万円を支払った1カ月後に自ら命を絶ちました。投資話を持ち掛けた男が、返金を求める女性に対して笑い飛ばすという音声が残されています。

■「モノなしマルチ商法」返金交渉を録音

 社会人になったばかりの22歳。遺影は、笑顔の大学を卒業した時のものでした。

 母親に残した手紙:「お母さんへ。22年間、ずっと私を育ててくれてありがとう。投資詐欺の件でたくさん迷惑を掛け、心配を掛けてしまってごめんなさい」

 大学の同級生からの紹介で「暗号資産」の運用をうたう投資に150万円を支払い、その後、自ら命を絶った川上穂野香さん(当時22歳)。

 穂野香さんの母親 川上佐永子さん:「自分でも消費者センター行ったり、契約を解約してほしいと連絡したりしたけれど、あかんというか『できひん、何もできひん』という感じで。何で、一人で抱え込んでしまったんかなって」

 穂野香さんの交際相手:「話しに行こうかと、会いに行ってるんですよ。加害者に。(相手の男はお金を)受け取ったとは言いますけど『俺は仲介役しただけやから』とか、『返金できません』とか。まあ薄っぺらい言葉ばかりはいているやつというか」

 穂野香さん:「誰が誰にお金を渡して…」
 お金を渡した男:「(投資先の)会社がやっていることなので」
 交際相手:「こいつの150万円、返してほしい」
 お金を渡した男:「何で?ハハハ」

■入金催促…LINE100件「レバレッジ4倍」

 佐永子さん:「9月1日に入金はしているんですけれど、9月3日に私と犬連れて出掛けたりしていて、全然元気でしたし、本当にその(亡くなる)直近になるまで、私には隠していたんだと思うんですよ」

 穂野香さんが投資を持ち掛けられた2年前の8月末、大学時代の同級生のSNS。インスタグラムがきっかけでした。穂野香さんが何気なく返信すると、話が一気に進んでいったといいます。

 佐永子さん:「その日のうちに、すぐにグループLINEを強制的に作られて。リーダー格の男に色々LINEで説明されていますね」

 同級生がLINEである男を紹介。その後のやりとりの一部始終が残されています。

 最初は疑っていた様子の穂野香さん。ただ、考える間を与えないためか、LINEで100件にも及ぶやりとりを繰り返し、すぐに入金を催促する内容もありました。

 実際のLINEのやり取り:「新事業の9月1日までの入金の方は、レバレッジ4倍なんで。正直、今やるのを強くおすすめしております」

 穂野香さんは、この投資話の詳細をノートにまとめていました。

 穂野香さんのノート:「AQUA投資について」「暗号通貨」「最低30万」「デメリットは正直ない」

 穂野香さんが出した結論。それは「デメリットは正直ない」でした。

 しかし、問題となったのは、投資をするための資金。穂野香さんが2歳の時、両親は離婚。決して裕福とは言えない暮らしのなか、穂野香さんは母の苦労を見て育ったといいます。

 奨学金を受け取り、大学に通っていた穂野香さん。300万円以上の奨学金の返済がまもなく始まる予定だったといいます。

 LINEには、投資のための金の用意の仕方について、具体的な指示が書かれていました。

■直前の異変…「全然笑わずにボーッと」

 実際のLINEでのやりとり:「借入理由は引っ越しで60万円から70万円くらいって言えば、40万円から50万円は1社で借りられるから、そこから50、50とか借りたらいいよー!」

 穂野香さんは、指示された通りに消費者金融3社から50万円ずつ借りて、合計150万円を支払っていました。

 しかし、穂野香さんが手を出した投資話。その実態は、「モノなしマルチ商法」でした。

 「モノなしマルチ商法」とは、暗号資産など実態の不明な投資を持ち掛けて金を集め、さらに友人らを勧誘させて投資を拡大する手口です。

 この「モノなしマルチ商法」に手を出してしまった穂野香さん。しばらくすると、様子に変化があったといいます。

 佐永子さん:「亡くなる2週間くらい前に、元気がないというか。家でもソファに寝転がって携帯ずっと見て。全然笑わずにボーッとしている。『どうしたん?』って聞いても『いや、なんでもない』とか言って。『どうしたん?全然言ってよ』と言ったらポツポツ言い出して。『ジュビリーエースみたいなんに大学の友達から言われて』と、経緯をポロポロ言い出して。『お金借りて入れてしまった』という感じでした」

 投資について、母親に打ち明けた穂野香さん。この時、体調も悪化し、うつ病の診断も出ていたといいます。娘を心配した母親は、旅行に行くよう勧めたといいます。

 交際相手との九州旅行。旅行での写真では笑顔を見せている穂野香さん。しかし…。

 穂野香さんの交際相手:「楽しくは、やってくれてたのかなという感じで」「(Q.あまりそういうのは出さないようにしている?)無理しているのかなとは思いましたけど。(加害者の所に)話しに行こうかと。会いに行っているんですよ、その時に加害者に」

 穂野香さんは、旅行から帰ってきてすぐ、交際相手の男性とともに投資話を持ち掛けてきた男に会いに行ったといいます。その時の音声が、残されていました。

■返金求め…男と面会「何で?ハハハハ」

 交際相手:「こいつの150万円、返してほしい」
 お金を渡した男:「何で?ハハハ」
 交際相手:「僕からしたら(投資を)止めたい」
 お金を渡した男:「ハハハ」
 交際相手:「(お金が)どこに行ったか分からない」
 お金を渡した男:「入金したら、返金はできない」

 交際相手:「あまりいい発言ではないですけど、人をなめ腐っているような態度でしたね。ずっと」

 穂野香さん:「誰が誰にお金を渡して、どういうルートで…」
 お金を渡した男:「(投資先の)会社がやっていることで、僕ら一切関わりない」

 投資先の会社に穂野香さんのお金を渡しただけで、自分は関係ないと言い張る男。そんな男にまで、穂野香さんが気をつかう場面もありました。

 穂野香さん:「ごめん。時間がだいぶ過ぎたけど、大丈夫ですか?」
 お金を渡した男:「ヤバいですね。大丈夫ではない。ハハハハ」
 穂野香さん:「解散しましょう。ごめんな、しょうもない話に付き合わせてしまって。ありがとうございました。ごめんね」

 この翌日、穂野香さんは、投資話の被害相談をするため母親と警察に行くと約束をしていたのですが、2020年10月1日、大阪府内のホテルで自ら命を絶ちました。

 母親は午前中に仕事を終えて自宅に帰宅するも、そこには穂野香さんの姿はありませんでした。

 佐永子さん:「今帰ってきたわ」「どこ行ってるん?」「ちょっと返信してや」「警察行くで」

 何度、連絡しても既読にならないLINE。

 交際相手:「バイト中に、めっちゃ携帯鳴るなと思って。お母さんから『(穂野香が)家に帰ってきていない』『一緒におらんの?』と言われて」

 佐永子さん:「夜中12時すぎですかね、見つかったの…」

 投資話からわずか1カ月。帰らぬ人となった穂野香さん。発見されたホテルには、母親や友人に宛てた6通の遺書が残されていました。

■母に残した手紙…お金心配する言葉

 母親に残した手紙:「お母さんへ。22年間ずっと私を育ててくれてありがとう。投資詐欺の件でたくさん迷惑を掛け、心配を掛けてしまってごめんなさい」

 佐永子さん:「もう怒りと後悔ですかね。こんなことに誘われなかったら、絶対に死んでないと思いますし、何歳くらいで結婚すんのかなとか、そんな話とかも、私ともちょこちょこしていたんで。こんな話がなかったら、今も元気に楽しく過ごしていると思うんで」

 交際相手:「私のこの行動でというのが、本人を一番追い込んでいたんかなと。僕らも追い込んでいったんかもしれないですね。知らないうちに」

 穂野香さんが亡くなって2年後の今年7月。穂香香さんを勧誘した20代の男は、「詐欺罪」ではなく「金融商品取引法違反」で罰金70万円の略式起訴となりました。

 佐永子さん:「なんか、やっぱ罰金刑だけ。もう皆だます気でやっているというふうに捉えていますけど、それを立証するのが難しいから、詐欺罪にならないということやと思うんですけど。そこをもうちょっとどうにかならないのかなとは思います」

 一方、穂野香さんが投資した会社「ジュビリーエース」の首謀者とみられるメンバーも、去年11月に金融商品取引法違反の容疑で逮捕され、執行猶予付きの有罪判決になりました。出資者から集めた金額は、650億円にも上ります。

 希望していた教育関係の仕事に就き、社会人として歩み出したばかりだった穂野香さん。穂野香さんの遺書の最後は、お金を心配する言葉で締めくくられていました。

 穂野香さんの遺書:「ごめんなさい。本当にありがとう。服とかは売ってね。多少のお金にしかならんかもやけど」

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2022年9月13日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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