韓国で8月15日は、日本による統治が終わった日。光を取り戻したという意味から『光復節』と呼ばれる日です。当然、日本への言及があることから、その時の政権が対日関係をどう見ているのかのバロメーターになります。
今年、就任した尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が、式典で演説を行いました。
尹錫悦大統領:「尊敬する国民の皆さま、かつて私たちの“自由”を守るため、政治的支配から脱するべき対象だった日本は、今は、世界の自由に対する脅威に立ち向かい、力を合わせて共に歩むべき隣人。韓日関係が普遍的価値に基づいて、両国の未来と時代的使命に向かうとき。歴史問題もちゃんと解決できる」
専門家は、今回の演説のポイントを、このように分析しています。
慶応大学(現代韓国朝鮮政治)・西野純也教授:「尹政権は、国際社会での韓国の役割、特に“自由”や“人権”といった普遍的な価値の面での役割を果たすと言っているので、その観点からアメリカとの同盟関係、そして、自由民主主義を共に掲げる隣国である日本との連帯を極めて重視していると思う」
日韓関係は今、決して良い状態とはいえません。先の文在寅(ムン・ジェイン)政権の時には、慰安婦問題日韓合意の事実上破棄や、徴用工の最高裁判決もあり、むしろ“最悪”と呼ばれる関係になっています。
歴史的経緯もあり、複雑な関係だった日本と韓国。しかし、1998年、両国の関係は大きく進展していました。日韓共同宣言の時です。
小渕恵三総理(当時):「植民地支配により、多大な損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びを申し上げます」
金大中(キム・デジュン)大統領(当時):「私は、日本の大衆文化を段階的に開放するという方針を示し、これが両国文化の健全な発展と、両国の友好に貢献することを期待しています」
これを機に韓国では、制限されていた日本の映画や漫画、音楽などが一部解禁。文化面での交流が始まり、逆に日本では、後の韓流ブームへとつながっていきました。
大衆レベルで大きく距離を詰めた両国ですが、政治面は逆方向へと向かっていきます。2005年、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は、対日外交戦争を打ち出しました。当時の支持率が低迷していたため、政権浮揚のカンフル剤として“反日”が使われました。これ以降、歴代政権は国内世論を意識した対日強硬策を取るようになりました。
尹大統領は就任前の今年3月、日韓関係の展望を「古臭い反日扇動だけで、国際社会の巨大な変化に立ち向かうことはできない」と表現していました。ただ、尹大統領は多くの国内問題を抱えていて、支持率は25%。それに加えて、19日までに徴用工問題で資産売却命令が確定する可能性があります。
慶応大学(現代韓国朝鮮政治)・西野純也教授:「国民認識が変わったなかで、大統領や与党が日本問題を利用することは、もはや時代にそぐわない。他方で、今の韓国の状況からすると、日本問題というのは、国内の政治、つまり与党と野党の対立と非常に密接に関わってしまっている。日本問題に厳しい野党からの厳しい追及のなかで、これだけ日韓関係の改善を強く訴えて、努力をしていることについては、しっかり評価すべき。その尹政権が、国民を説得しやすい環境を作っていく。そのためには、尹政権だけではなく、日本と韓国が共に協力して、努力していく必要がある」
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