ロシアの連邦捜査委員会などは、ウクライナ国境付近のブリャンスク州で、ウクライナ軍のヘリコプターが少なくとも6回、空爆したといいます。住宅街に着弾し、8人がけが。このうち、幼い子どもを含む2人が重体だといいます。さらに、ベルゴロド州でも2つの集落が、ウクライナの砲撃を受けたと知事が発表。死傷者は確認されていないといいます。
一方、ウクライナ側は「ロシア国民の愛国心をさらに刺激し、“特別軍事作戦”への参加意欲を起こさせるため」とロシアの偽旗作戦だと主張しています。
◆ロシア情勢に詳しい、防衛省防衛研究所の長谷川雄之さん、プロデューサーで、慶應義塾大学特任准教授の若新雄純さんに聞きます。
(Q.ウクライナ側は“偽旗作戦”だとして主張していますが、どう見ますか)
防衛省防衛研究所・長谷川雄之氏:まだ事実はわかりませんが、ウクライナ側がこの地域でロシアを攻撃するという合理性はないと思います。北部については、ロシア軍は一度、大きく後退しています。ウクライナ軍は、東部に戦力を集中したい以上、この地域でロシア軍を攻撃するというのは考えにくいです。
(Q.ロシアの偽旗作戦が事実だとすると、自国民を傷つけてまで、そのようなことをするのでしょうか)
防衛省防衛研究所・長谷川雄之氏:ブチャにおける残虐な行為、そして、2022年2月以降のロシア政治の急速な変更をみると、従来の常識ではとらえきれないと思っています。また、あえて越境させて攻撃させるという可能性もあります。いずれにせよ、キーウ方面に、再び進軍させる口実として、利用する可能性は十分にあり得ると思います。
(Q.さまざまな情報が行き交うなか、私たちは、どのように情報に接するべきでしょうか)
慶應義塾大学特任准教授の若新雄純氏:こういうニュースに触れるときに、頭の中で情報を上書き保存しないということが大事だと思います。最新の情報だけを見て、物事を全部だと思ってしまいがちです。情報の上書き保存せず、別名保存する。過去にあったことも並べて、バランスよく見る必要があると思います。情報操作につながりかねない。発信している側の思うつぼになりかねませんので、注意が必要です。
ロシアは、東部2州の制圧に向けて、攻撃を強めています。アメリカのシンクタンクは、ルハンシク州は9割以上の地域が制圧状態だとする一方で、マリウポリがあるドネツク州は、まだ、北部のほとんどが制圧されていないとしています。そこで、ロシアが次に狙うとされているのが、スロビャンスクです。
(Q.この都市の重要性について、教えてください)
防衛省防衛研究所・長谷川雄之氏:スロビャンスクは、いまだロシアが制圧できていない大きな都市のひとつです。ロシアとしては、ドネツク州全体の制圧を目指しているとみられますので、ここは避けて通れないと思います。さらに、イジュームでの戦闘が活発になると思います
(Q.スロビャンスクでは、どのような戦況になると予想されますか)
防衛省防衛研究所・長谷川雄之氏:一般市民が多く暮らす街ですので、激しい市街戦になることを懸念しています。これまでマリウポリ周辺で起きた悲惨な行為が繰り返される可能性があります。また、私が気にしているのが、以前あったFSB=連邦保安局という情報機関の職員150人が追放されたというニュースです。プーチン政権の政権基盤として、政権を長らく支えてきました。こうしたことによって、プーチン大統領による不信感が増してくるということで、“インテリジェンスの質の低下”というのが懸念されます。それによって、より非合理性が増してきて、非人道的な戦いというのが想定されます。
(Q.東部2州への大規模攻撃ですが、猶予はどれくらいあるとみていますか)
一つポイントとなるのが5月9日。3週間後に戦勝記念日が迫っています。そこまでに一定の戦果を挙げなければ、ロシア国内的に説明がつかない状況になります。そして、プーチン政権としての揺らぎが大きくなると思います。
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