道警ヤジ裁判 原告勝訴 裁判長「政治批判の機会を無理やり奪われた」 原告の喜びと”ロシアの現状” (22/03/25 20:29)

道警ヤジ裁判 原告勝訴 裁判長「政治批判の機会を無理やり奪われた」 原告の喜びと”ロシアの現状” (22/03/25 20:29)

3年前、札幌市で街頭演説中の安倍元首相にヤジを飛ばした男女が、警察官に違法に排除されたとして、道に損害賠償を求めていた裁判で、札幌地裁は3月25日、原告の訴えを認める判決を言い渡しました。

 (旗出し「勝訴」など)

 札幌地裁は25日、原告2人が主張し続けてきたヤジ排除の違法性を認めました。

 「帰れ 安倍辞めろ」(排除されていく様子)」

 約千人の聴衆の中、ヤジを飛ばした直後に数人の警察官に追いやられていく男性。

 札幌市に住む大杉雅栄さんは2019年7月、JR札幌駅前で参議院選挙の応援演説中だった安倍元首相に「安倍やめろ」「帰れ」などとヤジを飛ばし、警察官に排除されました。

 警察官:「うちらも信用できないから、一緒についていくしかないの」

 また、当時大学生だった桃井希生さんも「増税反対」などとヤジを飛ばして排除され、さらに警察官から現場から離れるまで付きまといを受けました。

 2人はその後、警察官による排除は「表現の自由の侵害で精神的苦痛を受けた」などとして、道に660万円の損害賠償を求め裁判を起こしていました。

 25日の判決で、札幌地裁の広瀬孝裁判長は「政治批判の機会を無理やり奪われた表現の自由の侵害と認められる。違法と言わざるを得ない」として2人の訴えを認め、2人に計88万円を支払うよう命じました。

 周囲とトラブルになる危険があり、法律に基づき適切な対応だったなどとする道警の主張は退けられた形となりました。

 ヤジ排除問題から2年8か月あまり。

 三上 侑希 記者:「原告側が走って裁判所から出てきました。勝訴の旗を掲げています」

 大杉 雅栄さん:「こちらが主張していたことだったり求めていたことを、基本的には100%認めてくれた。排除は不当なんだヤジを飛ばすことは、表現の自由の一部なんだ、ということをはっきりと明言してくれたので、本当にうれしい判決です」

 25日午後には、支援者らを集め報告集会が開かれました。

 大杉さんらは訴えが全面的に認められたことへの喜びを口にした一方、排除にいたった経緯などが解明されなかったことへの不満も…。

 桃井 希生さん :「付きまといの会話の警察官の非論理性とか、誠実に対応しようとしない様子とか、”これじゃあ認められない”という判決なので感動しました」

 大杉 雅栄さん :「公安警察という、特殊な動きをする警察が、どういう意図でやったのか。(指示の)ルートは依然として明らかになっていない。課題が残る」

 一方、北海道警は「判決内容を精査し対応を検討してまいります」とコメントしています。

 (ヤジを排除する様子)「安倍辞めろ」「抗議だよ、抗議さっきと同じだよ。暴力とかじゃないから」

 大杉 雅栄さん : 「(警察による)根拠がない行為なので、それに対する怒りというか納得できない。釈然としない気持ちはある。ここを通る度に思いますね」

 「表現の自由」をめぐり、主張を続けてきた原告の2人。

 桃井 希生さん :「警察官が両脇にいる。腕組まれていた。ヤジ飛ばしただけなのに、こんなにおおげさなことになるのかと」

 桃井 希生さん :「どこまでついてくるんですか? 本当に」

 警察官:「もう大声ださない? 大声出したら止めなきゃならないから」

 これは、排除後の様子です。動画では桃井さんが札幌駅から別の演説会場へ向かおうとした際の、警察官とのやりとりが収められていました。

 警察官:「ウィンウィンの関係になりたい」

 警察官:「なにか飲み物…ジンジャーエールですか? ウーロン茶ですか? きょうはもう諦めて」

 桃井 希生さん:「”表現の自由”がないと何も変えられない。今回のウクライナ侵攻(を進めるロシア国内)もだが、政治が”おかしい”と言う権利を認める判決になってほしい」

 そして25日、2年以上に及ぶ裁判で訴えが認められました。

 では、この判決を専門家はどう受け止めたのでしょうか。

 東京都立大学 星 周一郎 教授(刑法) :「早すぎた警備で過剰な警備。今回の判決をベースに演説中の秩序維持のあり方を考える契機にしてほしい」

 慶応義塾大学 鈴木 秀美 教授(憲法):「自由で民主的な社会の市民の表現の自由を守ることが大事と、認識するチャンスをくれた非常に重要な判決。あたりまえだけど、この判決で良かった」

 今回の判決のポイントは「表現の自由」で、「立憲民主政治の過程にとって不可欠の基本的人権」で「特に重要な憲法上の権利として尊重されなければならない」との司法判断がされたことにあります。

 ウクライナ侵攻をするロシアでは、反戦デモをした大勢の人が拘束されています。軍の虚偽情報を流すと最大15年の禁固刑が科されるなど、表現の自由が侵害されている状態です。テレビや新聞などのメディアでは、政府に都合の良い情報しか流れず、国民の「知る権利」を狭めることに…。今回の判決は、表現の自由の意味を考えるきっかけになるかもしれません

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