【解説】ロシアからの「脅し」「警告」か、ロシア海軍が相次いで日本の海峡を通過

【解説】ロシアからの「脅し」「警告」か、ロシア海軍が相次いで日本の海峡を通過

ロシア海軍の艦艇が、3月に入ってから相次いで宗谷海峡や津軽海峡を通過しています。専門家によると、これらの行動は日本の対ロシア「制裁」に対する「けん制」ではないかと見ています。もはや対岸の火事ではなくなってきつつある「ウクライナ問題」。日本を取り巻く状況について解説します。

■報復?ロシアが日本を「非友好国」に

良原安美キャスター:
まずは日本のロシアに対する経済制裁をまとめていきます。日本はプーチン大統領、ラブロフ外相、そしてロシアの新興財閥「オリガルヒ」のトップなど71の個人や団体の資産を凍結しました。資産を自由に動かせなくしたわけです。さらに、半導体などハイテク製品の輸出を原則禁止にしました。また、ロシアの一部の銀行を国際的な決済ネットワーク「SWIFT」から排除しました。これは、ロシアの企業が貿易する際に決算が困難になるといった影響が考えられる動きです。

では、これに対してロシアはどんな反応したのかというのを見ていきましょう。ロシアは3月7日、日本を「非友好国」に指定しました。この非友好国になりますと、その国の企業は取引の際、ロシア政府の許可が必要になります。また、非友好国の企業などが保有する特許の使用料が必要なくなると、ロシア側は一方的に決めたわけです。さらに、この非友好国になりますと、ロシアの債務者はルーブルで返済ができるというふうに、これもロシアが一方的に決めました。例えば、債務者がロシア、債権者が日本だとします。通常は安定した通貨である「ドル」で取引が行われるところを、この非友好国に指定されると、ロシア側は「ルーブル」で返済できるようになるというわけなんです。ただ、こうなると日本にどんな影響があるのか。第一生命経済研究所の永濱利廣氏によりますと、「ルーブルは今、価値が暴落しています。ロシアとの取引が多い企業は資金繰りが厳しくなり、倒産する可能性もある」ということなんです。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
借金をルーブルで返済。ルーブルってもうほとんど紙くず同然で、こども銀行の紙幣みたいなもんですから、今回これで多少もちろん、ダメージは出ますけど、こういうことをやるロシアとはもう二度と付き合わないってことになりますから、ロシアの反撃はロシアにとって非常に逆にダメージになるということの方が大きいと思いますね。

ホラン千秋キャスター:
これはロシアの一方的な取り決めなわけですよね。

星浩さん:
そうです。日本とか欧米の制裁に対するロシアの報復なんですけども、報復といっても実際には効果は薄いと思いますね。宗谷海峡などの軍艦も、実際に自衛隊の人に聞いてみると、ロシアの船がポンコツで旧式なものですから、あんまり日本の方には牽制にはなってないというのが実態なんですね。

日比麻音子キャスター:
そのポンコツな船をあえて通過させるというのは、どういった意図なんでしょう。

星浩さん:
恐らく2つあって、ウクライナで手一杯と言われているが、実はそうでもないということを見せるため。それから日本がいろいろ制裁をしてますから、それに対するけん制なんですけど。専門家から見れば、旧式の船を巡回させてもあんまり役には立たないと思っていますから、ロシアの狙っているようなけん制には実際にはなっていないと思いますね。

ホランキャスター:
意図としては、「平気ですよ、余裕がありますよ」というところを見せたいと。

星浩さん:
ウクライナで手一杯なわけじゃないっていう、その意図もなんとなく見え透いてるところもありますよね。

日比キャスター:
ですから東において、日本というのは一つ意識してるぞというメッセージでもあるわけですか。

星浩さん:
ここはもう、日本はそういうことに対して毅然と制裁を強化していくということですし、私は思うんですけど、特に安倍元首相はこれまでに27回もプーチン大統領と首脳会談をやっているわけですから。個人的信頼関係を築いたというわけですから、ここは安倍元首相が「プーチン大統領に裏切られた」ということをきちんと声明で出してもらいたいと思いますね。

■北方領土問題 「経済特区」になると、交渉どうなる?

良原キャスター:
さらにロシアは北方領土でも気になる動きを見せています。3月10日、地対空ミサイルを使った軍事演習を北方領土で行いました。また9日には、北方領土を含む地域に「経済特区」を設置する法案にプーチン大統領が署名したんです。これは、北方領土に進出した国内外の企業に対して、「法人税、固定資産税などを最大20年間免除する」という内容になっています。こうした動き、どんな狙いがあるんでしょうか、外交安全保障政策に詳しい明海大学の小谷哲男教授によりますと「これ以上、経済制裁を続けるならば、北方領土は返還しないという脅し、警告の可能性もある」ということなんです。

日比キャスター:
こういった「脅し」とみられるようなことを繰り返せば繰り返すほど、本当にロシア自身の首を絞めてるようにしか思えないのですが、これに関してはどのようにご覧なりますか。

星浩さん:
北方領土の問題は、ここはちょっと深刻なのは、やっぱり北方領土によってロシアとアメリカは軍事的に向き合っているわけですよね。ですからロシアは「絶対に北方領土はもう渡さない」と、軍事的にもこれまで以上にロシアにとって、重要な意味を持つようになってきましたので。日本はこれまで北方領土「四島一括返還」という方針だったのが、安倍元首相のときに、事実上「二島先行返還」に譲歩したわけです。その譲歩したこと自体がもうあまり意味がなくなってくる。ここはやっぱり日本は原理原則に立ち戻って、北方領土をちゃんと全部返しなさいと。ロシアに要求を突きつけていくというスタンスに戻す必要があると思いますね。

ホランキャスター:
現在、北方領土では日本の企業がエネルギー関連のプロジェクトに参加している部分あると思うんですけれども、「経済特区」にするとこれはどれくらい影響があるものなのでしょうか。

星浩さん:
「経済特区」にするということは、ロシアの法律を全て適用するということですから、ロシアの領土だということを主張するわけです。これまで日本は日本の領土だと言ってきたわけですから、共同経済活動というので折り合えないかと模索してきたんです。これでもう事実上、共同経済活動はできませんと。なぜかというとロシアは自分の法律を適用するということを一方的に打ち出したわけですから、その「日露両国が共同で経済活動をするということはもうできません」ということを意味することですから。日本は日本なりに「共同経済活動というプランはもうこれでチャラですよ」ということをきちんと明確にするタイミングだと思いますね。

日比キャスター:
ですから、日本は毅然な態度をとり続ける、これしかないといったところですかね。

星浩さん:
そう思いますね。
(15日19:48)

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