再び新型コロナ感染が拡大しています。12日の全国の新規感染者は去年9月以来、4カ月ぶりに1万人を超え、1万3000人台となりました。
大阪では1711人の感染が確認されました。年代別でみると、20~40代だけで1000人以上、60代以上は140人、10歳未満の子どもたちも110人います。
自治体が直面している問題について、大阪府の吉村洋文知事に聞きます。
(Q.感染急拡大をどう受け止めていますか)
吉村洋文知事:「驚異的な感染拡大力だと思っています。オミクロン株は、今までのコロナウイルスとは違う拡大力だというのが、我々現場の認識です。前週増加比でも約8倍に増えています。この感染拡大はさらに続く可能性が高いと思っていますので、非常に警戒しています」
(Q.新規感染者の内訳を見ると、20~30代でほぼ半分ということですが、特徴をどう捉えていますか)
吉村洋文知事:「どの感染の波の時もそうですが、最初は20~30代、若い方で立ち上がります。その後、60代、高齢の方に増えてくるという状況です。第5波のデルタ株と比べると、60代はほとんど増えない状況でしたが、今回のオミクロン株については、20~30代がほぼ垂直ぐらいの角度で急増し、60代の方もそれにつられて増えています。今後、感染の波は高齢者にもやってくると思っています」
(Q.大阪でオミクロン株に感染の可能性がある80代の男性が亡くなったということですが、注意しなければならない事実と言えそうですね)
吉村洋文知事:「オミクロン株は重症化率が低いと言われ、現実にデルタ株より低いと思いますが、亡くなった80代男性は高齢者施設にいた方で、もともと重い基礎疾患を持っていました。高齢者の方、主に基礎疾患を持っている方にとっては、感染すると亡くなることもあると。なんとかそれを防ぎたいと思っていますが、感染が広がるとどうしても亡くなる方が出てくる。非常に気を付けなければならないと思います」
(Q.大阪では現在、重症病床の使用率は1%ということです。この現状をどのように分析していますか)
吉村洋文知事:「大阪では重症病床を積極的に確保しようと、600床以上、確保しています。現在6人で1%ということで、現時点で見ても、デルタ株などと比べて重症化率は低いだろうと思います。病床使用率は16.7%で、中等症は入院している方のなかで20%くらいです。デルタ株の時は50~60%の方が中等症だったので、重症化という意味ではそこまで重たい状態になっていません。病床はそこまでひっ迫していませんが、感染者数が圧倒的に多いので、やはり医療体制も警戒しなければいけない。今後はより、自宅療養者が増えてくるので、自宅療養者の支援体制を大阪でも強化しているところです」
(Q.自宅療養者に対する支援体制について、今直面している課題はなんですか)
吉村洋文知事:「まず、圧倒的に感染者が増えるということを想定しなければなりません。今、例えば沖縄で1600人、大阪の人口でひきなおすと1万人。これまで3000人が経験した最大の数字ですので、圧倒的に増える可能性があります。保健所からの連絡がつかなくなる場合も想定しなければいけないと思っています。保健所の職員の皆さんは一生懸命やってくれていますが、それでも自宅療養で、あまりリスクが高くない方に連絡がいきにくくなる可能性も十分あります。そういった観点から、保健所を介さなくても早期治療が受けられる仕組みが重要だと思っています。そのために、24時間のSOSセンターを作り、13日から100人体制、週明けから150人体制で、保健所から連絡がなければ、こちらに連絡をしてもらえれば、病院を紹介します。保健所から連絡がなかなかないということも想定するくらい、感染者が増えています。そのなかでも大事なのは、早期治療です。早期治療の体制を取れるように、医療の最適化を図っていきたいと思っています」
12日の全国知事会で提言されたのは“濃厚接触者の対応”見直しでした。吉村知事も11日「濃厚接触者の原則14日間の自宅待機は改めるべき」と発言していますが、岸田総理は「オミクロン患者の入退院基準などについて、科学的知見の集約を急ぎ進め、対応を示していく」と濃厚接触者について明言しませんでした。
(Q.濃厚接触者の対応を改めるべきとする理由を教えてください)
吉村洋文知事:「国にはぜひ、現場を見て頂きたいと思います。感染者が圧倒的に増えると、濃厚接触者も増えていきます。医療従事者の方、エッセンシャルワーカーの方が陽性・濃厚接触者になった場合に、14日間の待機となると、病院の医療機能が低下して、コロナ以外の病気も診れなくなる可能性が出てきます。世の中にある病気はコロナだけではありません。特にこの寒い時期は、心筋梗塞・脳梗塞など緊急で運ばれる方が非常に増える時期でもあります。濃厚接触者を14日間とめておくということは、逆の意味で社会のインフラが止まる可能性があります。14日間というのは、もともとは潜伏期間が長い従来株を想定しています。オミクロン株のもう一つの特徴は、潜伏期間が約3日と短いと言われています。3日の潜伏期間で本当に14日間の待機が必要なのか。潜伏期間に合わせた期間の短縮をやっていかないと、社会のインフラが回らなくなる。別の意味での医療崩壊が起きる可能性があります。まさに沖縄も直面していると思いますが、この現実に向き合ってもらいたいと思います」
(Q.国は、潜伏期間が3日程度だと明確にアナウンスしていません。しかし、これまでのデータなどから見て、潜伏期間が短いことを前提に進めなければいけないという考えですか)
吉村洋文知事:「アメリカのCDC(疾病管理センター)では、すでに3日と分析されています。日本の専門家の多くの意見を聞いても、3日程度だという意見が多いです。科学的根拠が必要だと思いますが、正式な見解はできるだけ早く出してもらって、今日も明日も現実に問題はあるわけですから、オミクロン株に合わせた濃厚接触者への対応をぜひやってもらいたいと思います」
(Q.エッセンシャルワーカーに影響が出て、社会のインフラが壊れるという話がありました。エッセンシャルワーカーというのは、どのような範囲で捉えていますか)
吉村洋文知事:「医療従事者もそうですし、高齢者施設や保育所の職員、警察や消防など、非常に幅が広いと思います。定義が難しいのであれば、エッセンシャルワーカーというくくりをせずに、オミクロン株の特性にもとづいた濃厚接触者そのものの期間短縮をすればいいと思っています」
(Q.隔離期間の短縮はどれくらいを想定していますか)
吉村洋文知事:「当然、最後は専門家の意見をもとに判断すべきだと思いますが、もし潜伏期間が3日ということであれば、ちょっと多めにとっても5日にするとかですね。14日ではないと思います。5日にして、よりエッセンシャルワーカーで重要な方は、その日の朝に検査をして、陰性であれば仕事ができるとか。社会インフラを止めない取り組みが必要だと思います」
(Q.期間を短縮すればリスクが増えるかもしれないという見方もあります。その判断はどこでしていくべきだと思いますか)
吉村洋文知事:「どちらのリスクが多いかを考えるべきだと思っています。例えば大きな病院で、救急治療ができなくなる、身近な病院でも診療が受けられなくなるリスク。もう一つは、濃厚接触者の範囲を狭めることによって、感染が広がるリスク。どちらかのリスクを取る必要があります。もうノーリスクではいれませんので。ノーリスクを追求して14日のままでいくと、沖縄が今本当に困っているように、病院自体が成り立たなくなる。そこに行く患者さんが一番困ります。県民の皆さんが困ります。この現実を、国は受け止めてもらいたいです。潜伏期間が3日と言われているなかで、14日はさすがに長すぎる。石橋をたたいて渡らないレベルだと思っています」
(Q.国は3回目のワクチン接種について、できるだけ前倒しをする方針ですが、どう受け止めていますか)
吉村洋文知事:「できれば前倒しの判断が1カ月早くして頂ければ良かったなと思います。ただ、振り返って結果論を言っても仕方がないので、今できるだけ早く接種をしていくことが重要だと思っています。今どんどん進めていますし、在庫で置いておいても仕方がないので、特にこの3回目の接種については早めていく。できる自治体からどんどんやっていく。我々はどんどん早くできますので、できれば国も早くワクチンを供給して頂ければと思います」
(Q.全国の知事からは『ワクチン供給の道筋が見えないから計画も立てられない』という話も聞かれました。これまでの国の取り組みをどう評価しますか)
吉村洋文知事:「現場から見ると、医療従事者の方を準備し、接種場を準備し、お願いをしという段取りがあります。どのくらいのワクチンが来るのかを早めに教えて頂ければ、その分早く開始できるということになります。国はどういう情報を持っているか分かりませんが、できるだけ早く供給スケジュールを出して頂いて、前倒しの大号令をかけて頂ければ、大きく前に進むと思います」
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